景気悪化でも6,000億円もの経常利益をあげる見通し(09年3月期) をもちながら、大企業による “非正規切り” の引き金をひいたトヨタ自動車。 この20年間、同社は正社員を増やさず、期間従業員(期間工) を増やして日本一の利益をあげてきたことが明らかになりました。 岡清彦記者
いまから約20年前の1990年、トヨタの経常利益は、7,338億円でした。 08年3月期決算では、2.2倍の1兆5806億円ものばく大な利益をあげました。
しかし、正社員は逆に7万人(90年) から6万9千人(08年) へと減っています。
一方、90年に2100人だった期間従業員は、バブル崩壊後の不況で “期間工切り” がおこなわれた結果、94年にはいったんゼロになりました。
しかし2000年以降、トヨタの急激な生産増に合わせて増え、最高時は1万人を超えて、生産現場の3割を占めるに至りました (04年)。 そして07年、トヨタはGMを抜いて世界一の自動車メーカーに。 期間従業員が、文字通りトヨタの “基幹工” として支え、利益を生んできました。
期間従業員の日給は約1万円で、年収は約300万円程度です (残業代を除く)。 正社員の平均年収(829万円) の半分以下です。
生産増になると増やし、生産減になると減らす―― 。 トヨタは、安い賃金と雇用の調整弁として期間従業員を使ってきたのです。
これをあけすけに語ったのが、中間決算発表(11月6日) での木下光男副社長発言です。
「期間従業員は、(今年1月の) ピーク時に9,000人前後在籍していた。 ずっと前は、多くて3,000人。 近年の急な生産増と正規社員が法律で残業がしにくくなったから。
(09年)3月末時点では、3,000人前後の在籍になるのではないか」
ことしになってすでに減らした3,000人に加え、新たに3,000人を切ることを表明したのです。 株主への中間配当金は2,037億円。 5%の90億円もあれば3,000人を切らずにすむのに――。
『トヨタの品格』 の著書がある愛知労働問題研究所の伊藤欽次副所長が語ります。
「トヨタの1兆円を超える巨額のもうけと13.9兆円のため込み利益は、正社員を増やさず、期間従業員を生産調整弁にして得たものだ。 トヨタは、社会的責任を果たすために、即刻
“期間工切り” を中止すべきだ」
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