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[職場だより] 2015年11月13日 東芝再生への道7
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経営改革「集中と選択」の検証
9. 経営改革「集中と選択」の検証
東芝が1998年から取り組んだ経営改革「集中
と選択」は、巨大化した会社組織を、事業(製品)
ごとに分けた分社化が改革の中心でした。
分けられた会社ごとに執行役員が置かれ、その
役員の判断で会社を運営し、迅速に会社組織が
動けるようにしました。
大きな組織は、どうしても動きが遅くなりますから、
小さな組織に分割して、小回りが利くようにする
ことは、一般的に行われている組織改革の一手法です。
東芝の経営改革「集中と選択」は、初期の期間は
良い効果がたくさん出ました。
事業環境の変化にも素早く対応できるようになりま
した。
また1875年(明治8年)に創業し、百数十年操業して
きた東芝には、今の時代で見れば非効率な部分、
無駄な部分も残っていました。経営改革のなかで
それらの部分を見直し、改善や切り捨てを実行を
しました。それによって、プラス方向に利益を押し
上げました。
なんといっても2001年から2008年のリーマン
ショックまでは、世界の景気が右肩上がりに
好調でした。
このような要因があったので、東芝は利益を
上げ続け、経営改革の成功例としてもてはやさ
れたのです。
2008年のリーマンショックで経営がいっきに
悪化したのは、成功といわれた経営改革が、
実は事業環境や景気の変化に弱い体質の会社を
作っていたのです。
会社が利益を上げるためにとった項目のなかに、
将来のための研究開発費、技術習得費を減らす、
社員の人件費を削る、儲けの少ない事業を切り
捨てることなどがありました。その結果、会社の
体力は弱まるばかりでした。
初期の段階では、経営改革「集中と選択」が
始まるまでに蓄積されていた技術やノウハウ、
人的つながりもなども残っていましたので、
事業活動ができましたが、時間と共にそれらを
使い果たしました。
そんなことは分かっていたのに、なぜ修正
できなかったのでしょうか。それは分けた会社
ごとに独立採算で利益を上げることを強く要求
されていたからです。3半期(6ヵ月+6ヵ月+6ヵ月)
赤字が続けば、分社が取り潰されるという厳しい
ものでした。
また経営改革で、トップの社長が大きな権力を
握り、方針をトップダウンでおろす(押しつける)。
役員や経営幹部は、自分の意見を述べられず、
従うしかない、そういう側面も強くなりました。
役員や経営幹部の中には、目前の利益を
上げることが、自己の地位を安泰にすると考えて、
自分が役員の間だけは利益があがるように
経営し、行動するものも出ました。
会社の将来は置き去りにされました。
リーマンショックで悪化した東芝の経営を、
西田、佐々木、田中と続いた3社長が粉飾
決算で隠し続けたため、「集中と選択」の
経営改革の負の部分が、明るみに出るのに
6年もの年月がかかりました。
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