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[職場だより] 2015年11月01日 東芝再生への道6
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経営をゆがめたイデオロギーから脱却を
8. 経営をゆがめたイデオロギーから脱却を
東芝が2000年代に社内に持ち込んだ「株主に
利益を還元する企業に」というイデオロギーは、
1990年代に世界に広まり、特に米国と日本に
まん延した経営理論でした。
出どころは「新自由主義」という経済理論
です。企業は株主のものという主張(株主資本
主義と呼ばれる)をかかげて、目先の利益に
執着する経営を行います。
現在の大企業の主要な株主は、機関投資家
といわれる金融資本です。目先の利益・配当を
目的に株主になり、儲からなくなったら手を
引き(株を売り払う)、儲かる企業に移動し
ます(投資を移す)。
株主資本主義では、四半期(3ヵ月)ごとに
経営状況を発表します。そのつど株価が大きく
上下するようになります。経営者は目前の
3ヵ月に確実に利益を上げることを要求されます。
今回の東芝の粉飾決算でも、パソコン事業が
利益を上げているように見せかけるため、3ヵ月
ごとの経営状況の発表が近づくと、製造委託会社
に部品を高く売りつけ、帳簿上で利益を計上し、
発表が終わると買い戻すという手法をとっていま
した。
東芝の経営者も目先の利益を上げるため、儲け
の低い事業をどんどん切り捨てるリストラを行い
ました。将来のための研究開発費、技術習得費も
削減し、社員の賃金、福利厚生費も削りました。
その分を当期利益にまわし、株主の配当金にしま
した。
研究開発費、技術習得費を削減した東芝は、
イノベーション(新しい製品やサービスを生み出す
技術や手法)を起こして、会社を持続させると
宣伝しました。
イノベーションは、これまでの技術の集大成の
うえに生まれてくるものです。将来どの事業・製品で、
イノベーションが生まれるかは分からないのです。
ところが東芝は、儲けの低い事業をどんどん切り
捨てたため、イノベーションを生む土壌を狭め失って
しまいました。
社員に対してイノベーション研修が行われるてい
ますが、「現実には人員も、予算もないので、精神
論で終わっている」との声があがっています。
設計部門の社員は「当面する製品の設計に追
われ、毎日遅くまで残業で、これではイノベーショ
ンを考える余裕がない。」と言っていました。
商品(事業)は、成長期、安定期、衰退期と
いうサイクルを持って、必ず終えんがおとずれ
ます。
いま儲かっている商品(事業)をやっている
だけでは、会社の持続的成長は見込めません。
東芝を愛して、東芝の株を持っていただいている、
多くの株主の利益に反する状況が生まれます。
「株主に利益を還元する企業に」というイデオロギー
が持ち込まれてから、東芝の経営はゆがんでしまい
ました。東芝再生を図る上で、このイデオロギーから
の脱却が求められています。
●「新自由主義」経済理論は、自民党政治によって、
日本の国の政策にも持ち込まれました。自由競争、
市場原理主義を掲げて、規制緩和、社会保障・福祉
の切り下げが行われました。
結果は、格差社会と呼ばれる貧富の差が広がり、
国民の所得は減り、貧困層が増大しました。治安も
悪化しました。周知の事実です。
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