シリーズ 「職場から」    2006.6

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社員が壊れる! NTT成果主義賃金… 成果にならない客からの電話は一方的にガチャン!!
    従業員から批判が多い成果主義賃金。
    写真はNTT東日本の本社ビル=東京・新宿区
 20万人近い従業員を抱える日本最大級の企業、NTT。 2001年4月に成果主義賃金が導入されてから5年たちました。

  いま職場はどうなっているのでしょうか。



 ある従業員が証言します。 「仲間をけ落としてまで成果をあげようとする人が出てきた」

 昨年5月、各種サービスの受付窓口 「116番」 の職場で、事件が起きました。

 「電話の移転・廃止をしたい」 というお客の電話を 「(成果主義賃金の) 点数にならないから」 と一方的に切る人がいました。 点数につながるインターネットサービスの新規申し込みばかりを受け付けたため、評価が上がり、社長表彰まで受けました。

 一方、電話を切られたお客は怒って電話をかけ直し、職場は混乱が続きました。

 NTTの成果主義賃金は従業員を半年ごとに 「SA、A、B、C、D」 の5段階で評価します。 賃金額の3〜4割を 「成果手当」 や 「成果加算」 として賃金に反映させます。

 最初に評価するのは各職場の課長ですが、「基準は不透明」 と従業員は語ります。 A と D の賃金格差は導入初年度で月額4万円前後。 その後も拡大していきます。

 設備工事の職場で働く男性(50代) の場合。本業の電話工事以外に、勤務時間外を前提にテレビや洗濯機などを販売しろといわれましたが、本業だけで大変だったので販売しませんでした。 すると課長は、「物販にチャレンジしていない」 とC評価にしました。

 この男性は、5年間賃上げなし。 手取りは22万円で 「失業した妻の生活費や子どもふたりの養育費もかかり、まったく貯金ができない。 病気になると D評価だというので、将来は不安だらけ」 です。

 ここに評価基準を示した内部文書があります。 (右)

 D とされた関西の従業員には、「年休の取得状況が多い」、勤務時間外の物品販売などに 「非協力的」 などの “理由” がつけられました。

 これらは労働基準法にも反します。 通信産業労働組合(通信労組) の抗議で 「こんな評価は公然とはできなくさせた」(労組役員) といいます。

成果主義賃金の評価基準を示したNTTの内部文書。年休の
取得状況や病気休暇、業務への取り組みなどのチェックが
 

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  NTT成果主義賃金の非情!
 
  半数は必ず C(賃上げなし) か D(賃下げ)
!!

 NTT西日本の男性従業員(50代) は3年半前、30年間以上勤めてきた設備工事の職場から、遠隔地の営業職場に配置転換されました。


賃金制度の会社資料を検討する
NTT の電話工事担当の従業員
 「雪の日も日照りの日も、見知らぬ土地でインターネット契約をお願いして回る毎日です」

 1年間かけて1,000軒を訪問し、やっと1〜2回線の契約をとりました。

 しかし、会社が設定した契約目標は契約回線数に換算して年間420回線分。 男性従業員は D評価とされました。

 成果主義賃金導入前と比べ、賃金は月5千円減の40万5千円、手取り30万円に。 ボーナスは25%分(年間40万円) が削減されました。

 パイは同じ

 通信労組に会社が提出した 「業績評価分布率」 によると、賃金が上がらないといわれるC評価と、賃下げになる D評価の従業員は、全体の50%を占めます。

 ある男性従業員は 「人件費総額という “パイ” がいっしょで、5段階評価の分布率が決まっていれば、採点は相対評価になる。 全員ががんばって高い業績をあげても、かならず C や D の人が出る。 上司は評価の基準を恣意 (しい) 的にせざるをえない。 成果主義賃金は、従業員同士の足の引っ張り合い、賃金の分捕り合戦になる制度だ」 と語ります。


 NTTが株主向けに公表している 「決算」 の資料によると、NTTグループの人件費総額は年々減少。

 従業員総数で割っても、ひとり当たりの人件費も減っています。  (右のグラフ)

 逆に、NTTグループ全体の利益(連結の税引前利益) は、2003年度1兆5,273億円、2004年度1兆7,233億円、2005年度1兆3,059億円と、毎年1兆円を超えています。

NTTグループの構造(図)と、年々減少する人件費総額(折れ線グラフ)

  11万人リストラと一体!

 NTTの成果主義賃金は、2001年4月に提案された 「50歳退職・賃下げ再雇用」(2002年5月実施) という大リストラ計画とともに、導入されました。

NTTの賃金制度の変せん(図)  このときの大リストラは、約20万人のグループ従業員のうち約11万人、2人に1人が対象という大規模なもの。

 NTT東日本とNTT西日本に勤務する50歳以上の従業員を主な標的に、「人的コストの低減を図る」 (2001年4月発表 「NTTグループの事業構造改革」) ことを目的に強行されました。

 その内容は、50歳以上の人をいったん退職させ、賃金が30〜15%低いNTT地域子会社(NTT東日本・西日本の子会社) に再雇用させるという乱暴なものです。

 退職・再雇用を拒否すれば、見せしめ的に遠隔地へ配置転換され、これまでとはまったく別の仕事をさせる――。

  技術の継承も困難に

 退職強要を拒否しNTT西日本に残ってがんばっている男性従業員(50代) はいいます。

 「成果主義賃金は、労働者をバラバラに競い合わせるので、先輩が後輩に技術を教えないなど、組織的に技術の継承を困難にしています。 また、50歳以上のベテラン労働者を集中的にリストラでいじめているので、会社で最も経験のある骨格部分を切り捨て、NTTの事業の屋台骨さえ掘り崩しています。 会社にとっても大変な損失ですよ」


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  安心できる賃金体系を!
        
通信産業労働組合中央執行委員長 岩崎 俊 さん

 NTTの成果主義賃金は、人件費総額を大幅に削減することが狙いです。 今年4月からは、さらに新しい賃金制度が導入されました。 50歳までの定期昇給で上がる年齢賃金を全廃して、全部を成果主義賃金にしました。

 大リストラとともに本格的に導入された成果主義賃金は、抵抗する労働者を中心に見せしめとして襲いかかっています。 大リストラ方針に従うかどうかが、事実上評価の基準にされています。

 しかし、経営者がそういう理不尽な攻撃をすればするほど、それとたたかう私たちの労働組合への信頼が広がり、組合員も毎月のように増えています。

 新しく組合員になった人は、こんなふうに語っています。

 「新しい賃金制度は、何十年も会社に尽くしてきた者を無視した賃金制度、差別賃金制度としか思えません。 会社に対して正しいと思うことを言える組合員になりたいと思います」

 「3人の子どもがいます。 少数ではあるが勇敢にたたかっている通信労組に魅力を感じ、思い切って加入の決意をしました」


 「廃止を」79%


 通信産業労働組合が昨年末から年初にかけて組合内外の従業員を対象に実施した 「春闘アンケート」 によると、3,203人の回答者のうち 79%が 成果主義賃金の 「廃止」 を求めています。

 評価の仕方についても 「基準が不透明」 と答えた人は 91%にのぼっています。


 大リストラを拒否してがんばっている労働者も全国で1,000人余にのぼります。 このうち50人が全国7カ所で裁判を起こして、この違法な大リストラの撤回を求めてたたかっています。

 人権侵害の成果主義賃金は一刻も早く廃止し、まじめに働く労働者と家族が安心して暮らせるような賃金体系に改めるべきです。

 出典: 「しんぶん 赤旗・日曜版」 2006年6月4日付

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