トピックス 2009.1
トヨタ … 虚構の「赤字」宣伝!
(上) 純利益は単独で2,200億円の黒字!
(中) 労働者冷遇/株主ら重視! ← へ ジャンプ
(下) 外需依存… 経営に責任!! ← へ ジャンプ
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トヨタは昨年暮れ、トヨタ労組との間で開かれた生産分科会で、「今期は連結で1,500億円、単独で2,200億円の赤字の見通し」 となり、「緊急事態と呼ぶべき大変厳しい状況」 「非常事態」 として、1月は3日間の稼働停止、2月以降も全工場のいっせい稼働停止日、「会社休業日」 を設けることを明らかにしました。 ライン停止もやむをえない「非常事態」―― トヨタは 「赤字」 宣伝を大々的に繰り広げていますが、本当にトヨタの経営は深刻な状況にあるのでしょうか。 トヨタの 「赤字」 宣伝について、3回連載で考えます。 (藤田宏・国民運動委員会・労働チーム)
(上) 純利益は 単独で2,200億円の黒字!
トヨタは昨年12月22日、業績見通しについての記者会見をしました。 この会見で、会社が組合に説明した 「連結1,500億円、単独2,200億円」
という赤字の根拠が示されています。
労働者に犠牲
説明資料を見ると、「赤字」 といっても営業利益のことで、営業外収支を含めた経常利益から、特別損失と税金を差し引いた純利益は、連結べースで500億円、単独で2,200億円の黒字になっているのです。
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世界的大不況のなかで、収益が悪化するのは当然です。 しかし、トヨタの場合は、企業の存続自体が問われているアメリカのビッグスリーのような状況ではなく、十分に体力があります。
トヨタが必要以上に 「赤字」 宣伝を強めるのは、不況の犠牲を労働者に転嫁して少しでも収益の悪化を防ぎたいからです。 なかでも、トヨタが率先して引き金を引いてきた
「非正規切り」 「派遣切り」 にたいして爆発的に高まる社会的批判をかわすねらいがあることをみておくことが必要です。
トヨタとその子会社は、不当にも3月末までに契約期間が満了した期間労働者1万人近くの契約打ち切りを強行しようとしています。 赤字になって、ラインも止めざるをえないのだから、それもやむをえないというわけです。
こんな理不尽なことは許せません。 トヨタがアメリカを中心に売り上げを大きく伸ばしたのは2002年以降のことです。 トヨタ全体の売り上げは、02年度の16兆円から07年度には10兆円以上も伸ばし、26.3兆円にもなりました。 内部留保も8.5兆円から13.9兆円へと、飛躍的に増やしています。
この大もうけを支えたのが、派遣や期間工など、低賃金の非正規労働者です。 トヨタが02年以降、売り上げを伸ばすのと比例して非正規労働者が増加します。
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トヨタグループ全体で、02年に3万人だった非正規労働者は、わずか5年間で5万7000人増えて、8万8000人にまでふくれあがります。 (上のグラフ)
巨額内部留保
トヨタの正社員の平均年収は約800万円ですが、非正規労働者は300万円です。 非正規労働者を増やせば、それだけで人件費を削減できて、ぼろもうけができるのです。
トヨタは、5年間で内部留保を5.4兆円増やしていますから、非正規労働者を1万人増やすごとに内部留保を1兆円近くため込んだ計算になります。 内部留保は、文字どおり非正規労働者の血と汗と涙の結晶です。
不況になったからといって、内部留保を1円も取りくずさずに、契約満了といって非正規労働者の首を切るようなことは絶対に許されません。 (つづく)
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出典: 日本共産党発行の 「しんぶん 赤旗・日曜版」 2009年1月14日付
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(中) 労働者冷遇! 株主ら重視!!
トヨタは2000年代に入って、世界一の自動車メーカーに成長しました。 そのなかで、トヨタの経営体質にも大きな変化が生まれています。
かつてトヨタの奥田碩会長(当時) は、日経連会長時代に、「経営者たるもの、首を切るなら、腹を切れ」 といったものですが、そのトヨタがいまでは、「派遣切り」
「非正規切り」 の引き金を引いています。
それにはわけがあります。 トヨタは金融・住宅バブルにおどるアメリカ市場に進出し、収益を拡大するために “アメリカ型経営” をとるようになったからです。
“アメリカ型経営” と “日本型経営” には大きな違いがありますが、その一つは内部留保です。 アメリカの企業は、日本のように膨大な内部留保を蓄積することはありません。 利益は、株主と経営者に厚く配当します。
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配当金が急増
トヨタは “日本型経営” にもとつく膨大な内部留保をため込むことと同時に “アメリカ型経営” にもとついて株主重視の配当をするという経営に変化します。
内部留保はこれまでどおり増やす、そのうえ株主配当もアメリカ企業並みに増やすというように変わってきたのです。
配当金が急激に増えています (左のグラフ)。
1株当たり配当金は、03年度が45円だったのが、07年度には140円に跳ね上がりました。 配当金総額は、同じ時期に1,512億円から、4,422億円へと3倍にもなっています。
役員報酬も重視されました。 03年度の1人当たり役員報酬は7,000万円でしたが、07年度は1億2200万円へと5,000万円以上も増えています。
株主重視、役員重視の経営のもとで、トヨタの正規労働者の平均賃金は、トヨタが大もうけをしていた03年度から06年度には低下傾向にあり、03年度の822万円から06年度の800万円へと22万円減少。
07年度には、若干上がりますが、それでも829万円です。
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正規、非正規を問わず、労働者すべてを踏みつけにして、株主や役員重視の経営をするようになったのです。
すぐにできる
この経営体質を転換させ、労働者や下請け・関連企業、地域経済などへの企業の社会的責任をはたさせることが必要です。 なかでも、「非正規切り」 をやめさせることは急務です。
トヨタはことし3月末までに、契約満了ということで1万人前後の 「非正規切り」 をおこなおうとしています。 しかし、トヨタは、雇用を確保する体力を十分持っています。
非正規労働者の賃金を年間300万円として計算すると、仮に1万人の非正規労働者の雇用を守ろうとすれば、必要なお金は300億円にしかすぎません。
株主配当を減らしても、内部留保を少し削っても、すぐにもできることです。 株主配当金の総額は、07年度4432億円です。 6.7%減らせばいいのです。
13.9兆円の膨大な内部留保は、わずか0.21%取り崩せば、「非正規切り」 をやめさせることができます。
トヨタの「赤字」宣伝は、こうした強靭(きょうじん) なトヨタの企業体力を覆い隠して、「非正規切り」 をはじめとした労働者いじめを合理化するものともなっています。 (つづく)
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出典: 日本共産党発行の 「しんぶん 赤旗・日曜版」 2009年1月15日付
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(下) 外需依存 … 経営に責任!
トヨタは、純利益が黒字にもかかわらず、「赤字」 宣伝を強めています。 世界不況という “天災” が押し寄せてきたのだから、労働者にも犠牲が広がるのはやむをえないといって、「非正規切り」 を強行しようとし、正規労働者には 「ライン停止」 による賃金切り下げを図っています。
天災ではない
トヨタの業績悪化は “天災” ではありません。
トヨタは、労働者や中小下請け企業に犠牲を押しつけてコストを削減し、国際競争力を強化してきました。 抜群の国際競争力をバネにして、海外で売り上げを拡大するのが、トヨタの経営戦略です。
なかでも、金融・住宅バブルが演出され、ローンによる消費拡大で、史上まれに見る好景気を謳歌(おうか) していたアメリカ市場に輸出を伸ばし、現地生産を拡大することが重視されました。
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トヨタの販売台数は、2003年度の672万台から、07年度には891万台に伸ばしています。 219万台も伸びたことになります。 そのうち90万台近くがアメリカで増加しています。
トヨタは、アメリカ市場で収益を伸ばすために、膨大な内部留保を活用して、アメリカの現地生産能力を強化します。 03年には、カナダ工場やインディアナ工場の生産体制を増強し、06年には、メキシコ工場やテキサス工場を稼働させ、完成車の供給能力を拡大しました。 車種についても、これまでの強みであった小型車から、景気後退の影響を受けやすいピックアップトラックにも手を広げました。
国内工場でもアメリカ向け生産が増え、その比率は02年の46%から07年の56%に跳ね上がっています。 そのなかで、07年度の日本の販売台数は、03年度比で11万台減りました。
トヨタの経営陣が、いかに、内需をかえりみず、外需に依存し、生産を増強し、売り上げを伸ばしてきたかがわかります。
トヨタの国際競争力強化の経営戦略は、アメリカ経済に極端に依存する企業体質をつくることになりました。 アメリカの金融・住宅バブルが破綻(はたん) すると、それと連動して、トヨタの業績が悪化するような体質になったのです。
賃金もカット
トヨタの業績悪化の責任は、労働者にはひとかけらもありません。 アメリカのバブル景気に便乗する戦略をとった経営の責任です。 ところが、トヨタは、その犠牲を労働者におしつけています。
生産調整のためにもうける会社休業日は賃金を2割カットする、期間工も任期満了で契約を打ち切るというのです。
自らの責任で招いた事態を、経営陣が賞与カットだけで済まして、労働者に犠牲を転嫁するようなことは許されません。
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大企業を先頭に 「派遣切り」 「期間工切り」 にいっせいに乗り出し、雇用が一気に悪化しています。 それがまた、日本経済悪化に拍車をかけています。
トヨタの 「赤字」 宣伝を打ち破り、「非正規切り」 をやめさせ、非正規労働者の雇用を守ることは、日本経済の悪化に歯止めをかけ、外需頼みから内需主導の日本経済に転換させるとりくみの重要な一翼を担うものとなっています。
同時に、このとりくみは、中期的には内需に裏うちされた、トヨタの安定した企業基盤を固めることにつながるものとなっているのです。 (おわり) (藤田宏・国民運動委員会労働チーム)
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出典: 日本共産党発行の 「しんぶん 赤旗・日曜版」 2009年1月16日付
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