偽装請負が問題となったキヤノンが、今度は派遣・請負労働者らを大量に切り捨てており、地域経済を壊すものだと怒りの声が上がっています。派遣・請負労働者ら500人以上が雇い止めに追い込まれたというキヤノンプレシジョン工場がある青森県弘前市では――
。 (深山直人)
「来年いっぱい契約が残っていたのにショックです。 直接雇用の期間社員や正社員になりたいと思っていたのにショックです。 ハローワークにいってみたけど、時給が比較的ましな製造業関係はまったく仕事がない。 厳しい冬になりそうです」
コピー機部品をつくるキヤノン工場で働いていて11月10日付で解雇されたAさん(28) は、重い口調で語りました。
キヤノンは、タカシンなど派遣・請負会社への発注を10月で打ち切り、280人の労働者を雇い止めに追い込みました。 退職金もなく再就職先の紹介もなし。
ハローワークの担当者を呼んで説明会を開いただけでした。
|
|
「500人にのぼる」
解雇が通告されたのは、1カ月前の10月10日。 生産ラインを止めて労働者が食堂に集められ、アメリカ向けのコピー機部品が減産になったため解雇すると告げられました。
9月末にも別の請負会社の労働者が雇い止めされたばかり。 キヤノンは削減数を明らかにしませんが、労働者は 「生産ラインが4本止まった工場もあるから全部で500人にのぼるだろう」 と語ります。
3つの工場で働く従業員4,800人のうち派遣・請負は3,400人にものぼっていました。 今年8月に第三工場を稼働したばかり。 新工場稼働前の昨年12月には1,000人の従業員を募集し、弘前市長が先頭にたって県知事に人手確保を要請。
県が対策会議を持つなど肩入れしましたが、1年もたたずに半数近い労働者が雇い止めされたことになります。
|
キヤノンプレシジョンの工場=青森県弘前市 |
同社で派遣労働者は偽装請負で働かされたうえ、日勤時給850円、交通費もなく、残業や夜勤をしても月15、16万円にしかならない低賃金で使われてきました。
日本共産党の志位和夫委員長が国会で同社の偽装請負を追及し社会問題になるなか、キヤノンは派遣をなくして請負社員と期間社員、正社員への転換をすすめていくと表明。 キヤノンプレシジョンでも3月、「派遣から請負に切り替える」 と告げられ、期間社員の募集などが行われました。
約束を果たさず
しかし、家族を抱えるBさんは 「切り替えは口だけだった。 請負契約を結ぶこともなく、以前の派遣契約のままで働かされてきた」 と証言します。
キヤノンは偽装請負是正の約束も果たさないまま、契約途中で労働者をほうり出したことになります。 キヤノンは減産とはいえ、今年末には5,800億円の営業利益を見込むなど雇用を確保する体力は十分にあります。
「契約途中で解雇され腹立
たしい」 と語る期間労働者 |
Bさんは語ります。
「新工場が稼働したばかりなのに、こんなに多くの人が解雇されるなんて納得できません。 キヤノンは人件費が安いから青森にやってきて、それでもうけたはず。
いいように使って、あとは契約期間が残っていようが簡単に雇い止めにする。 使い捨てのようなやり方は無責任ですよ」
県内最大級の企業だけに地域経済に与える深刻な影響が危ぐされています。 すでに県内の解雇者は9月末で2,000人を超え、昨年1年間の解雇者数を突破。 弘前市でもスーパーやガソリンスタンドチェーンの倒産など雇用不安が広がっています。
|
キヤノン本社広報部は、「雇い止めは派遣・請負会社の問題であり、われわれのあずかり知らない問題」 などと説明。 発注打ち切りで労働者を雇い止めに追い込みながら無責任な姿勢です。
守れ雇用
「企業も大変だろうが、雇った以上は責任を持って企業努力すべき。 若者が納得できない形で解雇されると、労働力の県外流失につながりかねない」 (県経営者協会の齊藤敏郎専務理事、東奥日報18日付)
などの声があがっています。
青森県労連は、雇用も地域経済も破壊する大企業の横暴は許されないとたたかいを広げています。 11月28日には、青森県知事に対して、県民の雇用と地域経済を守る立場から指導や監督、就労支援など緊急対策を取るよう申し入れる予定です。
県労連の西崎昭吉事務局長はいいます。
「非正規を安く使ってもうけて、利益の見込みが減ったというだけで大量の雇い止めを行うとは社会的責任を放棄するものです。 不況で倒産も相次いでおり、こんなやり方を許せば地域経済は疲弊するばかりだ。
雇用を守り、地域経済を守る責任を果たすよう企業と国や自治体に求めていきたい」
|