日本とヨーロッパの「非正規」事情
出典:「民主青年新聞」
(2009年3月2日号)
「非正規切り」による大量の失業者、ホームレスが次つぎと生みだされています。ところが日本政府は、無法のかぎりをつくす大企業にだんまりを決め込むばかり。
ヨーロッパの雇用対策を見比べると、日本政府の無責任ぶりが見えてきました。
首相や大臣が大企業に乗り込む
アメリカ発の経済危機の波は世界全体にひろがり、ヨーロッパでも“経済危機”を口実としたリストラ計画がすすめられようとしています。しかし、ヨーロッパの首相や担当大臣は企業に直接乗り込んで“安易な解雇はゆるさない”と大企業を指導しています。
EU(欧州連合)は今回の経済危機を受けて、08年11月に「欧州経済回復計画」を発表。
その計画にはこう書かれています。「困難なときには、われわれの行動はもっとも困っている人びとにむけられるべきである」
【フランス】
ボキエ雇用相、ルノーに“資産使え、リストラは論外”
自動車会社のルノーが5000人のリストラ計画をだしたときに、ボキエ雇用担当相が「ルノーのような巨大企業グループは、資産を持っているのだし、雇用破壊は論外だ」と批判。サルコジ仏大統領は同社のサンドゥビル工場に乗り込んで「閉鎖させない」と宣言し、工場無閉鎖をやめさせました
【スペイン】
セバスチャン産業商務相、日産に“リストラ撤回せよ”
日産自動車のバルセロナ工場が1600人の臨時労働者の解雇をすすめようとしたとき、セバスチャン産業商務相が解雇計画の撤廃をもとめ、撤回させました。
【ドイツ】
ショルツ労働社会相、雇用確保へ大企業30社と会合
ショルツ労働社会相が1月、シーメンス、ダイムラーなど大企業30社と2回の会合をおこない、「雇用確保のためのあらゆるてだてをつくす」という共同声明をまとめています。
【日本】
日本の麻生首相ゃ舛添厚労相は−−−。大企業に足を運ぶことはおろか、国会で大企業のあきらかな労働法違反が指摘されても「個々の企業についてはお答えできません」と、
お決まりの答弁をくり返すばかりです。
派遣は「選択」ではなく「政治」の問題
日本の労働問題などを取材・研究するフランスのジョセフ・カミュさん
トヨタや日産といった名だたる大企業がおこなう「派遣切り」に、「なぜこんなことに!?」とおどろいています。フランスで同じような計画が発表されるなら社会的大問題になるでしょう。
フランスでも派遣労働者のような不安定雇用がないわけではありません。しかし、不安定だからこそ、労働者を守るためのしくみがさまざまあります。たとえば、契約期間のの終了後には、派遣期間中の給料総額の10%が手当てとして支給されます。失業保険の給付期間は、日本は最長で1年ですが、フランスは最長で3年もらえます。
そもそも派遣労働のような働き方は、その人の選択の問題ではなく、制度の問題であり、制度をつくった政治の問題です。フランスでは、不安定だからこそ、人間らしく働けるようにしようと政治がさまざまな保証をつくります。日本政府は労働者の雇用を守るために政治的なイニシアチブをとるべきです。
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