[職場だより] 2021年04月24日 モノ言う株主から解放されると喜んだのは5日間だけ
−東芝、社長交代の深層@−
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◆4月6日、火曜日、朝6時19分、NHKのニュース「おはよう日本」が「東芝にイギリスの投資ファンドが買収提案」と報じました。
ニュースを見ていた社員のAさんはびっくりしました。
この日、Aさんは一日中インターネットで「東芝買収」のニュースを検索し、情報を集めました。
おおよそ分かったのは「イギリスに本拠を置く投資ファンド“CVCキャピタル・パートナーズ”が東芝を買収したいと提案して
きたこと」「買収したのち東芝株を非公開化すること」「非公開化になれば“モノ言う株主”から口出しされずに、経営が行える
こと」などでした。
Aさんは喜びました。東芝は経営再建のため2017年12月に、海外投資家を引受先とした6,000億円の増資を行いました。
おかげで東芝は倒産の危機を免れました。しかし、その中に“モノ言う株主”と呼ばれる投資ファンドが含まれていました。
現在東芝株の約3割近くを“モノ言う株主”が所有しています。
“モノ言う株主”は東芝の経営に再三口出しをし、東芝および経営陣はその対応に追われ、労力と時間を費やしてきました。
例えば米投資ファンドの「キングストーリ・キャピタル・マネージメント」は、自社株買いを要求し、東芝は
2018年11月9日〜2019年11月8日まで、総額7,000億円を使い、発行済株式総数の約3割にあたる1億9,810万株を買い戻しました。
さらに「キングストーリ・キャピタル・マネージメント」は、2019年3月11日付書簡で、「これまでとは異なる取締役が企業再生
をけん引する必要がある」と述べて、12人いる取締役の過半数の入れ替えを目指すと発表したりしました。
2021年3月18日には、“モノ言う株主”の要求で臨時株主総会が開かれました。
Aさんは、“モノ言う株主(投資ファンド)”の短期的利益の要求は、東芝の再生と成長の足かせになっている考えていました。
◆4月11日、日曜日、Aさんは親しくしている社員5人に連絡を取り、東芝の買収問題について意見交換をしました。
皆さんおしなべて「買収によって、東芝の経営が安定し、再建に取り組めるなら良いことだ」と歓迎していました。
◆4月12日、月曜日、Aさんは「東芝買収」のニュースの潮目が変わったことに気付きました。
「“CVCキャピタル・パートナーズ”の東芝買収は、車谷社長が仕組んだ策略だ」「車谷社長が保身のために、
裏で買収のシナリオを書いた」という報道が流れるようになりました。
◆4月14日、水曜日、午後、東芝社内に「社長CEO交代にあたり/社長CEO退任にあたり」の件名で、一斉メールが配信されました。
メールで綱川会長は「本日開催の取締役会の決議により、本日付で私が代表執行役社長CEOに就任することになりましたので、
お知らせいたします。………
本日、代表執行役社長CEOの車谷暢明さんから、本日付で当社の取締役および執行役、並びに代表執行役を辞任したい旨の
申し出があり、会社としてこれを受理しました。………」と綴っていました。
一斉メールが配信された後も、職場は平静でした。車谷社長の退任は既成になっていたように感じられました。
《続く》
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