[職場だより] 2020年07月07日 人の能力評価は、会社の都合で左右される
−人事処遇制度(賃金制度)改定で職場の声C−
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小杉さん(仮名)が、人の評価は難しいと思ったという経験を話してくれました。
小杉さんが、コンピューターのソフトウェアを設計する部門で働いていたときのことです。
4月の組織変更で、小杉さんのグループに、石田さん(仮名)という技術者が他のセクションから転入してきました。
4月の組織変更は定例行事で、人の移動も平常のことです。
石田さんは小杉さんより9歳年下です。
プログラムの設計の経験はありますが、小杉さんのようなベテランではありません。
また石田さんは、組織をまとめるリーダータイプではなく、どちらかというとおとなしい技術者です。
これまでの評価も「普通」でした。
この時期、小杉さんのグループは、3人でコンピューターのCPU(中央演算装置)と
入出力装置(キーボードやプリンタなど)の間を制御するプログラムを設計していました。
3人で設計を開始してから1ヵ月経ちましたが、データの転送品質や割込み処理の問題で、
3人が納得できる性能が出ず、ディスカッションが続いていました。
転入してきた石田さんは、小杉さんら3人が設計しているCPUと入出力装置の制御プログラムの仕様を聞いて、
何と1人で1週間でプログラムを作ってしまいました。
小杉さんらは「えっ」と驚き、石田さんの設計力は部門内でも話題になりました。
しかし、その後も石田さんの評価は「普通」でした。
小杉さんは後になって、この時のことを振り返って、小杉さんら3人の技術者は
「データーの転送品質を重視していたので、リカバリー機能が複雑になり、プログラムが大きくなり重くなった。
そのため求められる性能が出せなくなっていた。
時代とともにハードウェア(機械)の品質も向上しているし、品質のあり方も変わってきた。
そういう時代の流れに合わせた設計に進化していかなければならなった。」
「石田さんは、時流を認識し、技術(力)を進化させていた。
だから石田さんの、プログラムの設計発想は、あの時の私たち3人とは、まったく違っていた。」
石田さんの評価がその後も「普通」だったことについては、石田さんに問題があるのではなく、
「優秀」を付けて賃金を上げることに抵抗した会社側に原因があったと思っているとのことです。
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