[職場だより] 2019年06月04日 東芝の役員(会)は、どうして粉飾決算を止められなかったのか
        −東芝関係者取材レポート、その3−
 2015年4月、東芝の粉飾決算が明るみに出ました。  2009年度から決算報告を不正に処理して、7年間で 1,500億円を超える利益の積み増しを行っていました。  2016年12月には子会社ウェスチングハウス社の7,000億円の巨額損失も発覚しました。  赤字の事業を、黒字に見せかけ、利益が上がっているように報告し続けて来たため、東芝は資金繰りや、事業の継続が困難になり、経営が危機的状況におちいりました。
 粉飾決算の原因となったのが、2006年2月に米国の原子力発電機会社「ウェスチングハウス」を、6,210億円 という時価の3倍もの金額で買収し、 原子力発電機事業に投資を集中させた、歪んだ経営でした。総合電機メーカー東芝の他の事業への投資は削られ、開発費も人も削減されていきました。  歪んだ投資が続いたため東芝の技術力、製造力は停滞しました。
 このように、原子力発電機事業に投資を集中する歪んだ経営について、当時の社長、西田 厚聰氏(社長期間2005年6月〜2009年6月)は、どのように説明していたのでしょうか。  2000年代役員、執行役員の次の地位にいた会社幹部のAさんによると「西田社長は、原子力事業は利益が出る。  東芝は儲かる。原子力発電機の受注は増える。」と言っていた。  「その当時、社長の話を聞いて、そうなのかと思ったが、今になるとだまされていたと思う。」と述べています。
 OBのEさんは、「東芝は、2000年代初め行った経営改革で、社長が、次期役員の推薦や、役員報酬の決定などを行う、 委員会の長を兼ねるようになり、大きな権力を握るようになった。その結果、方針をトップダウンでおろす(押しつける)。 他の役員や経営幹部は、自分の意見を述べられず、従うしかない。」と言いました。
 労働組合の役員を経験したことがあるOBのIさんは、次のような話をしました。  「東芝は1960年代から、(元)公安警察官を雇い入れて労務担当にし、社員を監視する秘密組織(インフォーマル組織)を作り、 自主的な意見を持つ社員や、自主的な労働組合活動をする社員を監視し、排除した。  社員教育では、労働組合活動の敵視や、個人の自由な考えの抑圧、会社の意に従って働くことを強いるなど、人権や法律を無視する教育を行った。  このようにして、職場で自由に物が言えなくし、会社の意のままに黙って働く社員を作ってきた。  こういう社風のなかで育てられた社員が2000年代に役員になった。  そのため社長の方針に意見をいえなかった。」
 その他に社長の資質を問題にした意見もありました。  西室 泰三氏(社長期間1996年6月〜2000年6月)、西田 厚聰氏(社長期間2005年6月〜2009年6月)、 佐々木 則夫氏(社長期間2009年6月〜2013年6月)のワンマン、高圧的言動などを指摘し、他の役員たちが、それをいさめて、 話し合って経営方針を決めて行くことができてなかったのでは、と述べました。
東芝の職場を明るくする会
連絡先  メール akaruku-tsb@kki.ne.jp